持ち手のないバッグを、売る人
– – –
このバッグいかがですか?
あなたのためだけに
オーダーメイドでつくりました。
まずは、お好きなデザインを
お選びいただこうと思って、
10案つくりました。
もっと、オフェンシブに?
もちろんです。
ご要望に添うために
休みの日もやりますね。
途中、あなたのご主人から
「赤じゃなくて、青がいいんじゃない?」と
ご意見もありました。
完成間近の赤色のバッグを
青色にすることになりましたよね。
わたし、魔法使いじゃないので
最初からやり直したんです。
最初から。
きょう、完成を迎えることができて
とても嬉しいです。
これで解放されます。
わたし、がんばりました。
あなたのために、言われたとおりに
何度も何度もがんばったんです。
この努力を買ってくださいね。
あ、そうそう、
このバッグは“持ち手”が壊れているんです。
そこは大目に見てください。
え?不良品?
だって、仕方ないじゃないですか。
赤を、青にすることに精一杯で
持ち手まで、うまく付けれなかったんですよ。
バッグは抱えて持ってくだされば
使うことはできますよ!
お代は頂戴します。
わたし、とてもがんばったんですから。
– – –
昨今のクリエイティブ業界、
こんな話がまかり通っている。
動かないウェブサイトやアプリケーションが
平気で売られている。
ZECCAは遠巻きに見ている。
アマチュアは過程を押し売りする。
プロは成果を売る。