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値打ち

歳頃は、
22、23歳くらいの女が
盆すぎの夏空の下を
となり町まで歩いている。

「もうし、米がほしいげんけど」

その、訪ねた在所は
いまも向本折(むかいもとおり)という
地名で残っており、
広々とした田園の南には
今江潟という沼地があった。

女は、
田を持っている家に
米を求めた。

「米?おまえは何をもっとるがじゃ」

「ゼンじゃ」

「ゼン(銭)?そんなもんいらんわいや。
ほかに何があるがや」

「病院に行けば、何かあるかもしれん」

「ほんなら、箪笥のきもん(着物)持ってこいさ」

「わかった」

空蝉が鳴く道を
ぼんやりと戻ったであろう。

やかましく音をたてる飛行機が
西のほうに幾重か見える。
それは、この前まで竹で突けと言われた
進駐軍のもので、
この国の翼は、首からもがれてすでに無い。

「病院から、きもん持ってきた」

「こりゃ値打ちねえわ。
米は、やれん。
そこにあるネギ持ってけや」

「ネギか」

看護婦として勤めた病院から
持ってきた着物が
一合の米にもならない。

女は、もう戻るのも
寂しいやら面倒やら
何とも言えぬ気持ちになり、

「わかった。ネギでええ。ほしい」

と言った。

家の人間が
あごでしゃくった先にあるのは
ネギではなく、ネギの剥き皮だった。

「いやなら、帰れや」

日本円が値打ちを失った
75年前の夏、
祖母が体験した話だ。

位打ち

利益が出るほど
経営者は自分の力を過信し、
気位が上がりやすい。

位打ち(くらいうち)という。

もとの意味は、
「位を昇らせてゆけば
人間がだめになってゆく」ことを
知っていた朝廷が、
武家の棟梁に使った手法を指す。

むかし、鎌倉幕府を開いた源頼朝が
京の公卿衆からこの位打ちの目にあい、
懸命にそれを回避し、断り続けた。

信長の死後、
豊富秀吉も徳川家康を臣従させようと
位打ちにした。

経営者は、
自分から自分に発せられる位打ちを
回避し続けなければならない。

意図しないと出来ない。

コミュニケーションエラー

経営者は、
自分の事業を
考えに考えぬいて
考えすぎているので、
当然、顧客にも
魅力が伝わっているものと
錯覚する。

プロとアマチュア

プロは、
顧客が知りたいことを話す。

アマチュアは、
自分が知っていることを話す。

ブランド

人気を出すために
ブランド化を目指す人が多い。

逆だと思う。

ブランドの本質は、
「この商品は、あなたと関係ありません」と
明確化することにある。

価格も、たたずまいも、
関係したくない人から
逆算して設定する。
先に、売らない人をイメージする。

5割に無視され、
4割に遠ざけられ、
1割に圧倒的に支持される。

その1割の顧客が
ブランドを富ませてくれる。

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