趣味は妥協
「趣味って妥協でしょ」
と、言われたことがある。
あれは、たしか
10代の終わりの頃で、
盛夏の最中なのに
急に背のあたりが
さむくなるように感じた。
じぶんは、絵が好きだった。
絵で食べてゆくとは思わなかったが、
絵以外にまわりの友達と
競いあえるような取り柄がない。
何より、その先輩の一言が
臆病な陰影をさらに濃くした。
趣味は、妥協である。
いくら、何も持たない者でも
そうなりたくはないし
そうありたくはない。
当時の強迫観念か、何かしらが、
いまも机に向かう原動力となっている。